バーガーショップにて | ホタル舞う夜の空

バーガーショップにて

先日、友人と話をする必要があり、バーガーショップに入った。
この大学町にはカフェとかバーとかがたくさんあるし、食べ物ならばケバプ屋もパン屋もいくらでもある。
普段ならばバーガーショップ入ることはほとんどない。
この町に来て多分片手で足りるくらいしか入ったことが無いと思う。
しかし、この日私はその友人と結構大事な話というか打ち合わせをする必要があり、音楽がうるさいカフェやバーには入りたくなかった。
打ち合わせする内容が十分にストレスが溜まる話なので、大声を張り上げて話すような、さらにストレスが溜まるような状況は避けたかった。


飲み物だけを注文することにして、カウンターに近づいた。
平日の午後で、ちょうど客足の波と波の間のぽっかりと穴に落ち込むような時間帯で、いつもは込み合っている町の中心部のバーガーショップも、空いていた。
カウンターの前には、既に注文し終わった客が一人、食べものが出てくるのを待っている他、もう一人の客がちょうど注文をしていた。
カウンターの奥には店員が二人。
中年の女性とかなり若い女性の店員が、調理されて包装されたハンバーガーが出てくる棚に寄りかかるようにして話をしていた。

当然、その二人のうちの一人が私たちの対応をするものと思い、彼らの前あたりまで行き、無言で視線を送るが、こちらを見ようともしない。

カウンターの中では一人の女性店員が、一人の客の注文を取り会計をしてから、待っている別の客の品を用意して、行ったり来たりと忙しく動き回っていた。
その店員は、奥でおしゃべりしている若い方の店員よりも少し年上っぽい。
彼女の無駄の無い動きから、仕事にも慣れていて、パキパキとこなしている様子がうかがわれる。

カウンターの前には私たち二人とさらにもう一人客がやってきて立っている。
しかし、奥の二人の女性店員は、それでもお構いなしに話を続けている。
こういう時に声を掛けたって、どうせ無視されるか、あからさまに不機嫌な顔と声で「今すぐ行くから」なんて言われて待たされるに決まっている。
嫌な思いをさせられるのが目に見えているので、私は奥の二人に視線をやったまま、無言で待っていた。

すると、一人カウンターの中で忙しく動き回っていた女性社員が、さすがにイライラして奥の二人に声を掛けた。
誰か、注文を取って対応する人はいないの?
声を掛けられた二人はようやく、やれやれといった風に、しかし彼女に返事をするでもなく、そちらをチラリとも見ないで、私の方へやってきた。
若い方の店員だった。
これがまた、やたらと若い
16,7歳?
いかにも働き始めたばっかりです、という感じ。

コーヒーと紅茶を注文した。

会計は2.34ユーロ

5ユーロ札を渡した。

つり銭が表示された。
7.66ユーロ

、、、レジに10ユーロと打ち込んだらしい。

ま、ここまでならよくあること。

若い店員が、固まった、、、。

新人店員にプレッシャーを掛けるのはさすがにかわいそうなので、何も言わずに待っていた。

しかしこの店員、固まったまま、動かない、目がレジのつり銭表示に釘付けになり、まばたきさえ息をするのさえ忘れているようだ。

さすがにこっちもイライラしてきた。
が、しかし、客を目の前にして舞い上がり、簡単な計算が出来なくなるなんてのは、私だって想像できる。

さらに、ドイツ人にはプライドだけは高い人が多い。
特に、売り子なんかは要注意だ。
余計な口を挟むと、勝手に攻撃されたと受け取った相手にキレられる可能性がある。
わざわざ嫌な思いをさせられたくはない。

ので、それでもひたすらじっと待っていた。

それでも固まり続ける店員。

こっちもいい加減イライラしてきた頃、彼女は助っ人を呼んだ。
奥でおしゃべりしていた二人に、「働け(怒)」と声を掛けた、あのチャキチャキな店員だ。

新人が、困った風に先輩に説明する。
5ユーロを受け取ったのに、10ユーロって打ち込んじゃったの。だからつり銭が分からなくって、、、。

すると、チャキチャキ店員が即座に計算してくれて、無事お釣がもらえた、めでたし、めでたし。


って思うでしょ?


そうは問屋が卸さない。
だって、ここはドイツ。

5ユーロ札を受け取り、レジの表示と手の中のお札とをしばらく順繰りに眺めた後、
チャキチャキ店員は、もう既に勤めを終えている会計を戻そうとしたり、入力を無効にして新たに入力しなおそうとしたりし始めた。
ところがどっこい、よく分からないけど最近のレジはそんなに単純なシステムになっていない(らしい)
せっかくの試みが上手くいかず、諦めたチャキチャキは、レジを恨めしそうににらみつけながら、いくらかのコインを掴み出し、私によこした。

ぜーーーーーーーったい、間違っているに決まってる

そう強く確信した私は、即座にその金額を確かめた。
手の中にあるのは、1ユーロ硬貨とセント硬貨がジャラジャラ。

(あのね~、怒)
ちょっと待ってよ。コレ、違うでしょ?


するとチャキチャキが口を開いた。
それも、キレ気味に突っかかるような口調で。

私はね、会計がいくらだったのか知らなかったのよ。だから計算できなかったのっ!

私にキレるなんて、お門違いもいいとこ。
大人しく謝れば、こっちだって「そういうこともあるわよ」って、優しく笑って済ましてあげるのに。

私はね、5ユーロ渡したの。
彼女は10ユーロって打ち込んだから、お釣は7.66ユーロって出てたでしょ。
だからお釣は2.66ユーロ、そうでしょ?


チャキチャキが、不機嫌そのものでレジから1ユーロ硬貨を取り出し、こちらによこした。
わけもなくキレられた私は、仕返しするかのようにやっぱり不機嫌な顔で、その1ユーロを受け取りながら、大袈裟に「もうウンザリ」という顔で彼らの顔を交互に眺め、カウンターを後にしたのだった。

あーあ、私ってイヤな客。
後味悪い。


・・・・・

あれ?
でも今考えると、ドリンク二つで2.34ユーロってメチャクチャ安いな。
大体、金額が中途半端だし。
(笑)