メルツェデスとシェパードとおじさん
朝、空の散歩で墓地の脇を通り掛ると見かけるおじさんがいる。
おじさん、というか、おじいさん、という年代かもしれない。
おじさんは、シルバーのメルツェデスのコンビを墓地の脇に停め、
ハッチバックを開いてデッキブラシや熊手といった掃除道具などを出し、そのまま、ハッチバックのドアを少し開けたままで墓地へと行く。
車の後部にはケージが積んであって、ジャーマンシェパードが乗っている。
犬を墓地へ連れてはいるわけには行かないので、車に残したまま、こうしてドアを少し開けて行くのだ。
このシェパードが、他の犬が通り掛ると吠える。
向こうは大きな犬だから、そりゃあもう低い声で、ケージをガチャガチャいわせながら興奮して吠えられると、こっちは結構ビビる。
ある時、このおじさんの車が停まっているのに気づかずに、車から数メートル離れた所で、空に「お座り→伏せ→お座り」の連続をさせていた。
その頃は空もまだすぐにはコマンドに反応しなくって、こっちも結構イライラしながらやってたんだけど、どうにか数回こなしたところで、歩き出した。
数歩歩いて車が視界に入った途端、いつものようにシェパードが吠え出した。
立ち止まらずにそそくさと前を通り過ぎて家に向かって歩きつづけていると、後ろから声が聞こえた。
お座り、伏せ、お座り、かー、
いやー、たいしたもんだなあ、おい、お前聞いたか?
お前なんて、お座りさえできりゃあ上等だよなあ(笑)
振り返ると、メルツェデスの主、シェパードの飼い主が車まで戻ってきて、シェパードににこやかに話し掛けていた。
私たちのすぐ後ろから来ていたのだ。
笑って軽く会釈すると、おじさんは大きな声で「Viel Spass!」と言ってくれた。
このおじさん、
毎朝、必ず同じ時間に、メルツェデスにシェパードを乗せてやって来る。
毎朝、必ずお墓の掃除とお参りにやって来るのだ。
お墓でおじさんを待っている人が誰なのかなんてことは全く分からない。
でも、おじさんにとって、すごくすごく大切な人であったことだけは確かだ。
亡くなった人のことを、目が覚めるたびにまた改めて想わずにはいられず、そうして想い続けて暮らすのは、しんどいですね。
それを想うと、胸が締め付けられるような苦しさを感じる。
全然知らない人のことなのに、涙が落ちる。
余計なお世話だろうけど、
いつの日か、おじさんが毎朝墓地に来なくても暮らせるようになったらいいな、と、思う。
おじさん、というか、おじいさん、という年代かもしれない。
おじさんは、シルバーのメルツェデスのコンビを墓地の脇に停め、
ハッチバックを開いてデッキブラシや熊手といった掃除道具などを出し、そのまま、ハッチバックのドアを少し開けたままで墓地へと行く。
車の後部にはケージが積んであって、ジャーマンシェパードが乗っている。
犬を墓地へ連れてはいるわけには行かないので、車に残したまま、こうしてドアを少し開けて行くのだ。
このシェパードが、他の犬が通り掛ると吠える。
向こうは大きな犬だから、そりゃあもう低い声で、ケージをガチャガチャいわせながら興奮して吠えられると、こっちは結構ビビる。
ある時、このおじさんの車が停まっているのに気づかずに、車から数メートル離れた所で、空に「お座り→伏せ→お座り」の連続をさせていた。
その頃は空もまだすぐにはコマンドに反応しなくって、こっちも結構イライラしながらやってたんだけど、どうにか数回こなしたところで、歩き出した。
数歩歩いて車が視界に入った途端、いつものようにシェパードが吠え出した。
立ち止まらずにそそくさと前を通り過ぎて家に向かって歩きつづけていると、後ろから声が聞こえた。
お座り、伏せ、お座り、かー、
いやー、たいしたもんだなあ、おい、お前聞いたか?
お前なんて、お座りさえできりゃあ上等だよなあ(笑)
振り返ると、メルツェデスの主、シェパードの飼い主が車まで戻ってきて、シェパードににこやかに話し掛けていた。
私たちのすぐ後ろから来ていたのだ。
笑って軽く会釈すると、おじさんは大きな声で「Viel Spass!」と言ってくれた。
このおじさん、
毎朝、必ず同じ時間に、メルツェデスにシェパードを乗せてやって来る。
毎朝、必ずお墓の掃除とお参りにやって来るのだ。
お墓でおじさんを待っている人が誰なのかなんてことは全く分からない。
でも、おじさんにとって、すごくすごく大切な人であったことだけは確かだ。
亡くなった人のことを、目が覚めるたびにまた改めて想わずにはいられず、そうして想い続けて暮らすのは、しんどいですね。
それを想うと、胸が締め付けられるような苦しさを感じる。
全然知らない人のことなのに、涙が落ちる。
余計なお世話だろうけど、
いつの日か、おじさんが毎朝墓地に来なくても暮らせるようになったらいいな、と、思う。